黄色い手帖と白い世界 赤いギターと黒い船

少しだけ 背中をおせる 物語

序章

空を見ていた。

黒が濃い新月の夜。

 

闇に飲み込まれる。

闇に取り込まれる。

闇に寄り添われる。

闇に恋焦がれる。

 

自分が自分で無くなるような感覚におぼれる。

 

普段の生活に不満があるわけではない。

仕事をして、食事をして、風呂に入って、寝る。

連れに会って、メシを食って、ほどよく喋って、帰る。

だいたいこんな日々。

 

ただ時々、怖いだけ。

怖い?何が?

 

 

 

何が怖いのか分からない。

ただただ無性に怖くなることがある。

そんな時には空を見る。

部屋の明かりを全て消して。

視野も気配も全て消して。

何も見えない空を見る。

増える星を数えるうちに。

溶けて眠りに落ちるまで。

 

そしてあの日も空を見ていた。

部屋の明かりを全て消して。

視野も気配も全て消して。

何も見えない空を見る。

増える星を数えるうちに。

肥える星を見つめるうちに。

溶けて眠りに落ちるまで。

 

・・・・・・

 

肥える?

肥える?

何で?

何だ?

大きくなる。

大きくなる。

どんどんどんどん大きくなる。

違う。

違うな。

どうも違う。

近づいてくる。

近づいてくる。

どんどんどんどん近づいてくる。

なんなんだ。

おい。

いやいや。

でかすぎ。

なにこれ。

船?

 

「こんばんは。」

 

え?

 

「お迎えにあがりました。どうぞこちらへ。」

 

そして僕の意識はあの名曲のアウトロがフェードアウトしていくように遠のいていく。

その音の余韻を残しながら。

この夢の余韻を残しながら。

 

あぁなるほど。

これでようやく。

眠りに落ちれるわけだ。

 

序章~fin~