黄色い手帖と白い世界 赤いギターと黒い船

少しだけ 背中をおせる 物語

クロへの報告

「おはようございます。イエロウくん。」

 

「おはようございます。」

 

朝食後、絶賛筋肉痛の僕に話しかけてきたのはクロだった。

 

「ちょっとお話ししませんか?」

 

「いいですよ。」

 

では、と言って先を歩くクロについて行った。入ったのはブリーフィングルームだ。

 

「この船にも少し慣れましたか?」

 

「そうですね。元々あまり住む所にこだわりが無いので、普通に過ごせてます。」

 

「それは良かった。とはいえ正直に言うと、イエロウくんに関しては私もあまり心配してませんでした。あまり物怖じするタイプには見えませんでしたからね。」

 

「物怖じしない訳ではないですけど。ただすぐに友人が出来たので余計な事は考えなくて済んでます。」

 

「うまくやって頂いてる様ですね。君に仕事を依頼して正解でした。」

 

「ちなみに、今の段階で接触しているのはどなたですか?」

 

「鬼丸、朝日野さん、灰場です。接触・・・という言い方はあまりに他人行儀な感じがしますね。もう少しフランクな付き合いが出来ていますよ。」

 

「仰る通りですね。失礼しました。まだ船に乗って3日ほどだというのに素晴らしい成果です。」

 

成果って言い方もなぁ。まぁクロにとっては仕事の依頼なのだから間違いないのかな。むしろ僕がもっと淡白になった方がいいのだろうか。

 

「まぁでも本音を聞いたのは鬼丸だけですね。本人は吹っ切れた様で、三人の中では一番、僕の事をそれなりに信用してくれていると思います。朝日野さんも灰場もこだわりは持っているけど常識はある印象です。少し不器用なだけで。」

 

「不器用?何がでしょう?」

 

「人付き合い。」

 

「具体的にはどういった部分ですか?」

 

「朝日野さんは口調が少しきつい。誰に対しても同じ口調で喋りますよね。人によっては威圧感を感じる様な、ガキ大将みたいな感じですかね。それが苦手な人は確かにいると思います。でもちゃんと話をすれば内面はとても可愛い人ですよ。」

 

「灰場については基本的に他人への興味があまり無いというか。自分が失礼な事をしてしまうと反省はしますが、あまり大きな問題にしない感じがします。好きな事に対するこだわりは三人の中ではとても強い方ですね。だから付き合いを断るのは全然気にしない。ただしそれはもう既に彼の信念というか、ライフスタイルになっているんです。それを理解した上で付き合えば、別段気難しいとかそんな事はないです。」

 

「なるほどなるほど。いい報告が聞けました。」

 

「では、これからも引き続きよろしくお願いしますね。」

 

「分かりました。」

 

ではこれで、と席を立ち先に部屋を出て行く。

 

ふむ。

表向きは納得している様だが、腹の内は読めないな。とはいえまだまだ始まったばかりだ。ゆっくりと進めていこう。

 

「さて。」

 

今日は何をしようかな。

 

おわり。