黄色い手帖と白い世界 赤いギターと黒い船

少しだけ 背中をおせる 物語

2号室の鬼丸

朝6時半。

6時の目覚ましで一旦起きて少しだけ二度寝する。

いつも通りの起き方。

いつも通りトイレに行き、いつも通り顔を洗って、いつも通り着替えを済ます。

いつも通りのルーティンだ。

 

「さて。今日は初仕事だ。」

 

まずは腹ごしらえ。

時刻もちょうど7時。

食堂に行こう。

 

食堂に入ると結構人がいる。食事は時間が決まっているのだから、船の運行を最低限維持する人員以外はみんな来ているのだろう。

配膳はカウンターに並んでおかずをワンプレートでもらう。ご飯や汁物はセルフ。聞いた話だとパンはあまり出ないとのこと。作るのに時間が掛かるかららしい。厨房には人手が足りていないようだ。食べたい者は物資の補給で寄る街で自分達で購入して持ち込むのだそう。

 

とりあえずカウンターに並んでメインのプレートを受け取る。

 

「おはよう。あんたが新人さんか。時間通りではなまるだ。残さずに食べろよ。」

 

カウンター越しに話しかけられた。

はっきりとした口調、鋭いとまではいかないものの、自分の腕に自信をのぞかせるしっかりと相手を見つめる目。

 

「あたしは朝日野って言うんだ。あんたとは隣の部屋、3号室の住人だよ。一応ここで料理長をやらせてもらってる。あんたの名前は?」

 

「はじめまして家喜求一朗です。これからよろしくお願いします。」

 

「なるほど、略してイエロウだな。確かに4号室にはもってこいだ。」

 

「それ、クロさんにも言われました。どういう意味なんでしょう?」

 

「ダジャレみたいなもんさ。意味はまぁ追い追い分かるさ。まぁとにかくメシ食ってきなよ。今はあたしも仕事がある。またゆっくり話そう。」

 

「分かりました。ではいただきます。」

 

適当に空いている席に着き、食事を取った。目玉焼きにウインナー、サラダと味噌汁とご飯。シンプルでいい。朝はシンプルがいい。

 

勝手に納得して食べていると、急にカウンターが騒がしくなる。

見ると、赤いタンクトップのかなり大柄な男が大声で話している。

 

「おはよう!みかん!今日の朝食はなんだ!?」

 

がはは!と食堂全体に響き渡る声量で笑っている。

 

「おい、下の名前で呼ぶなといつも言っているだろうが。」

 

「まぁそう言うな!隣部屋のよしみじゃないか!いい名前だぞ、みかん!」

 

「とっととメシ持って行っちまえ!」

 

「おぉ!ありがとう!」

 

「ったく・・・!」

 

がはは!と笑いながら山のようにご飯をよそっている。

なるほど、あれが俗に言う“日本昔ばなし盛り”ってやつか。

初めて見た。

それに朝日野さん、下の名前はみかんらしい。かわいい名前だと思うけどあんまり好きじゃあなさそうな感じだった。確かに見た目や雰囲気とギャップがある気がする。だからだろうか?

 

・・・ん?

あいつ、朝日野さんと隣部屋って言ってなかったか?

もう片方の隣は僕だから、そうか、あいつが2号室の住人か。

よし、じゃあ食事が終わったら早速あいさつでも行

「お前が新入りだな!がはは!」

「・・・!?」

「俺は2号室の鬼丸ってもんだ!よろしく頼む!がはは!」

 

びっくりした、急に来るなよ心の準備ってもんがこっちには必要なんだよ!

 

「はじめまして、家喜求一朗です。こちらこそよろしくお願いします。」

 

「まぁそうかしこまるな!一緒にメシを食おう!そうすりゃもうファミリーだ!」

 

すげーなこいつ。ぐいぐい来すぎ。んで近くで見ると体でかすぎ。筋骨隆々。困る。まぁ仕事はし易そうだ。

 

「鬼丸さんはどんな仕事をされてるんですか?」

 

「うむ!主に甲板での見張りが多いな!あとは機関室で力仕事がある場合は呼ばれるぞ!」

 

「なるほど、すごい体してますもんね。」

 

「わかるか!?俺の筋肉たちの美しさが!」

 

「いやまぁ美しいかどうかは分かんないですけど、スゴいとは思います。」

 

「うむ!見どころあり!」

「俺は仕事が終わるとよくトレーニングルームで鍛えている!今日もやるぞ!お前も来い!」

 

「今日ですか?」

 

「当然だ!時間は有限なのだ!1分1秒でも美しい筋肉でありたいならすぐに始めるのだ!」

 

「分かりました。僕もトレーニングはしたいと思っていたので付き合います。」

 

「よし!では仕事が終わって夕食を摂ったら2時間後にトレーニングルームに集合だ!」

 

なんで2時間後?

 

「分かりました。じゃあその時間に向かいます。」

 

「うむ!がはは!」

 

さぁ、仕事を始めよう。

 

今日の日記

3号室の住人は朝日奈みかんさん。料理人。

2号室の住人は鬼丸さん。筋肉。